アスペ美大くん日誌

色々なものを持ってる美大卒のだめにんげん遺言状ブログ

■ プロの世界は甘くない?"T"殺人美術工房労働記Ⅱ ~ おじさんがパワーマックを破壊した日

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前回の話の続きです。

 

bidaikun.hatenablog.com

 

前回では女の子が靴でメッタ叩きにされる話をしましたが、今回はそれ以上の大惨事が起きました。

 

それはある日の昼休憩時のことでした。

ああやっとお昼かあと背を伸ばしキラートマトおじさん(社長)がいる事務室の前を通りかかると、早速中からキラトマ社長のドス黒いヘイトに満ちた声が聞こえてきました。

 

 

 

…あのさ、なぁんで入稿したデータが出てないのかなあ。

ねぇ。あれ今日までだったよね。

…いやそんなの後でいいからさ。

入稿したデータを出せよ。

ほら早く。早く出せよ。早く出せってば。

 

 

 

ヤバい今日こいつキレる。

 

もう既に危険を察知した私は、近くのロッカー室にさっと逃げました。

 

その途端、例によって例によるキラトマ大噴火が始まりました。

 

入稿したデータを出せ!!

 

入稿したデータを出せ!!

 

入稿したデータを出せ!!

 

入k、入稿したデーゴホッゴホッ、入稿したデータをだ出せ!!

 

出せっつってっんだよオォ!!!お前ら!!!

 

うわあ。

 

又かよ…しかも途中むせてるし。もう慣れっこだよこんなん。

と言いたい所ですが、今回の大ヒスはいつものに比べ1.5倍はひどいものでした。

 

その内、入稿したデータを出せ入稿したデータを出せとガシャーンパリーンとゴミ箱を蹴飛ばしたり、絵具棚をひっくり返して破壊する音が聞こえてきました。

 

ヤバいよヤバいよ…

 

内心超ビビりました。

 

と、その時です。

 

 

 

ドグワチャアッッっ

 

 

 

ナニッ。

 

非常にけたたましい音が。

 

…何?何をした?

 

同じくロッカー室に避難してた女性の社員が大慌てで外に出て、掃除機で何か散乱したものを吸う音が聞こえます。

 

「おい!誰がお前にそんなことしろって言った!O月(仮名)にやらせろぉ!」

 

「O月てめえ!

末代までお前のこと呪ってやる!!(←ほんとにこんなこと言った)

ウガアアアアア!!!

 

キラトマおじさん、O月さんの足めがけてむっちゃローキック喰らわせながら怒鳴り散らします(ちらっと覗いてみた)

 

悪夢だ。

 

お願いカミサマ、、、これが夢なら早く醒めて。

 


 

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後になって社員さんに聞きました。

 

あれ何壊したの?と。

 

社員さんは心底ウンザリした顔で、『パソコンだよ。それも〇十万もする。』と答えました。

 

当時、キラトマおじさんは3DCGも駆使した作品を作ってたので(大コケして話題にもならず大赤字になったみたいですが)、高性能なパソコンが必要だったのです。

 

いやそれ壊したらダメだろ。

 

ちなみに今回、もうこれで3台目らしいです。

 

そして壊したら壊したで、どこからともなく新品のパソコンがいきなり入荷してくるらしい。

 

やっぱり売れてる人はやること違いますねぇ。

 

 

 

そしてその日の午後。

 

私は大人しく仕事に従事していました。

 

…しかしある時、視線を感じてハッと後ろを振り向いたら、

 

うわぁ

 

飛び上がりそうになりました。

 

キラトマおじさんが、数m離れた所に立って工房を見渡していたのです。

 

しかし…何か様子が変でした。

目が虚ろで、髪はボサボサになっており…まるで落ち武者か亡霊の類に見えました。

 

後で聞いた話、あのとき怒鳴りまくったせいで一時的に片耳が聞こえなくなった(!)らしいのです。

 

工房の至る所には、万一キラトマおじさんが倒れた場合に連絡する先の貼り紙が張り付けてありました。

 

キラトマおじさんは死にそうになりながら、まるで亡者のようにヨタヨタ工房内を歩き回ってます。でも誰も無視して話しかけません。

 

そりゃそうだ。下手に話しかけたりでもしたら…ねぇ。

 

『なんか可哀想な人だなあ。』

 

あの時のあの光景、忘れられる訳もありません。

 


 

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結局、私はその工房は半年近くで辞めてしまいました。

体がついていかなかったのです(精神的にも)

 

この他にも工房内で色々なことがありました。 

ネタにしたくもない、口に出したくもない嫌なことも沢山ありました。

 

一見華やかしいアート界の裏の面を目の当たりにしてしまった気分です。 

 

 

 

あれから〇年もの月日が経ちました。

 

今、あの工房はどうなっていることだろう。

あの時、あそこで働いてた人達はどうなったことだろう。

多分もう死ぬまで顔を合わすこともないんだろうな。

 

私は今でも七転八倒しながら毎日を過ごしています。

『あんだけキツい思いしたんだから、これからどんなことあっても楽勝っしょ』と思ってた時期もありましたが、全然そんなことありませんでした。

 

もう暴力は見るのもされるのも沢山です。

私は静かに余生を送りたい。

それが今の何よりの望みです。

 

おしまい